ペーパーバックの虜

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「希望のひとしずく: A Drop of Hope」キース・カラブレーゼ あらすじと感想

図書館がくれた宝物」に続いて、また2024年の夏休みの課題図書を読んでみました。

今回は、中学校の指定図書になった「希望のひとしずく: A Drop of Hope」の原書(英語版)と日本語版を読みました。群像劇の形式でキャラクターが多く登場しますが、それぞれの話が次第につながっていくのが楽しかったです。

 

 

本書について

概要

この小説は、アメリカ・オハイオ州の小さな町で、中学生が、願いをかなえてくれるという伝説の井戸を見つけ、その後、町で不思議な出来事が起こり始める、という話です。

群像劇の形式をとっており、語り手が次々と入れ替わり、複数のエピソードが同時進行します。かなり短くテンポよく、ポンポン視点が切り替わりながら物語が進んでいくのが特徴です。

 

登場人物

冒頭に付いている登場人物リストにのっている人数はなんと31人!

ですが、リストの紹介文が若干ネタバレを含むので、目を通さずに本文を読むのをおすすめします。

人数は多いですが、関係が複雑だったり一度に多くの人物が登場したりしないので、特に読んでいて混乱することはなかったです。

ここでは、物語の中心であり、表紙にも描かれている3人だけ紹介します。

3人は中学1年生で、同じクラスに通っています。

  • アーネスト・ウィルメット……富裕層が集まる「ノース」に住む。小柄であることを気にしている。
  • ライアン・ハーディ……「サウス」に住む。
  • リジー・マコーマー……「サウス」に住む。ライアンと幼なじみ。

 

あらすじ

オハイオ州の小さな町に住む中学生のアーネストとライアンは、ある日偶然、願いをかなえてくれるという伝説の井戸を見つける。その後、町では人々の願いがかなうという不思議な出来事が起こり始める。

 

感想

口語調で読みやすい

まず、日本語訳に度肝を抜かれました。

「ディスってる」「アウェイ感がはんぱない」「ウザがらみされる」など、流行り言葉や若者言葉がふんだんに使われていて、「おきっぱになってた」など、全体的にかなり口語調です。

流行り言葉の使用は好みが分かれるかもしれませんが、翻訳本に特有の読みにくさは一切なく、文章のリズムやテンポが心地よかったです。

この本は、構成という観点からは読みやすくはないですが(視点がひっきりなしに切り替わる)、そのぶん文章自体をやさしくして、楽しく読めるように工夫してあるのかなと思いました。

 

運と偶然 そしてほんの少しの善意と勇気

少年が町の人たちの願いをかなえようとする、という話なら似たような話がたくさんありそうですが、この小説の他とは違って面白いと思うところは、主人公の少年たちがひたすら頑張って何かをしたり、願いをかなえたい人たち自身が直接何かをしたりして願いをかなえていくわけではなく、ほとんど偶然や運、それにほんの少しの善意や勇気が加わって願いがかなっていく、というところです。

ここがとても現代的だと思います。

親ガチャという言葉が蔓延する今、「願いがかなう」なんてほとんど運頼みではないかと思う子どもも少なくないはず。この本はそんな考えにも寄り添いながら、同時に、人生や人のやさしさにも希望を見い出させるような本でした。

You can't fix the world. But you do your best in your own little corner of it.

And you hope. (p.300)

ひとりの力で世界をよくすることなんかできない。だけど、世界のかたすみで、それぞれができることをすればいい。

そして、願えばいい。(p.304)

 

英語版はオーディオブックもおすすめ

英語版は、オーディブルで聞き放題の対象になっています。

ナレーターは男性。再生時間は6時間弱なので、長さとしては短いほうですかね。

原書タイトルの A Drop of Hope で検索すると出てきます。

 

www.amazon.co.jp