ペーパーバックの虜

洋書・翻訳書を中心とした読書ブログです

ラノベを英語で読んでみる:「わたしの幸せな結婚」「暦物語」

 

人気ライトノベル2作品の英語版を見つけたので、英語の勉強をかねて読んでみました。

英語版といえば、以前に「容疑者Xの献身」を読んで、すごく英訳の勉強になりましたが、今回の2作品も大変タメになる読書でした。

pprbck.com

 

 

「わたしの幸せな結婚 四」 顎木 あくみ

概要

異能と呼ばれる特別な力を受け継ぐ家系に生まれた少女が、強力な異能者でもある名家出身の軍人に嫁ぐお話。和風ファンタジーの恋愛小説。

 

感想

アニメを途中まで見ていたので、4巻から読むという暴挙に出てしまいました。

アニメと同様に原作も、自分にはやや合わないかな~と感じましたが、雰囲気や設定はとても好き。

一度読んでみたいとずっと思っていたし、英語の勉強になったので、読書体験としては大満足でした。

 

英語について

日本独特のものの英訳

明治・大正時代をモチーフにした設定なので、日本独特の物が多く出てきます。

着物に関する表現も出てきて参考になりました。

hakama pants、haori overcoat とか、固有名詞と一緒に紹介してくれるスタイル好き。

 

日本の独特の表現の勉強にもなりました。
例えば、試合の前の挨拶。

p.75 「お願いします」
「……お願いします」
p.50 "Thank you for the match."
"...Thank you as well."

「よろしくお願いします」は、メールとかで何となくThank you~でごまかしてきたけど、口頭でもやっぱりそうなるんだ……という発見でした。

他にも、

p.64 じゃあ、敬語もなしでいいですか? 美世さんも普通に話してくださって構いませんから!
p.42-43  In that case, I can ditch the stuffy formalities, right? You can talk to me like you normally would, too, Miyo, I don't mind!

「敬語なしでいいよ」とか「タメ口でいいよ」とかは、日本では学校時代では特に、ものすご~くよく使う言い回しだけど、英語にするとこんな感じなんだな~。

 

個人的に一番勉強になった箇所

今回、一番勉強になった箇所はここ。

p.59(春までに必ず、甘水を捕まえる)
p.39  I need to capture Usui come springtime, no matter what.

これ、comeのところがよく分からなくて、ifの省略+倒置かな~でもそれだと意味がよく分からないような……と思ったら、英英辞典にcomeの前置詞的用法を発見。「(その時)がきたら」的な意味っぽい。

old-fashioned, informalとも書いてあって、やや時代もので、モノローグの部分なので、それも意図した訳出なのかな。

 

学生にもおすすめ

英文添削のバイトもしているのですが、たまたま立て続けに end up ~ing の出題に遭遇したので、この本でも目にとまりました。

p.118 ずっとそんなふうに笑っていたら、本当の笑い方を忘れてしまいます
p.79  If you keep smiling like that, you'll end up forgetting what it means to truly smile. 

この本はティーン向けで難しくなく、中身が好みなら、難関校を目指す高校生や留学予定の大学生にもおすすめです。

日本独特の物が頻出する時代設定なのも、おすすめの理由の1つ。難関大学には日本文化にまつわる物事を説明させるところもあるので、参考になると思います。
もちろん、説明文ではないので、そのまま使える表現ばかりではないですが。
英訳問題では、和文英訳よりも、その前段階である和文和訳(英訳できるように日本語を言い換える)の作業が大事とよく言われます。今回初めてラノベの英語版を読みましたが、そういう視点からも、とても勉強になりました。

 

ちなみに

一箇所だけ Kiyoka が Kiyo になっている誤植があって、フフッとなりました。

Miyoと混ざっちゃったんだろうな~と(*´∀`*)

 

 

 

「暦物語」 西尾維新

 

概要

<物語>シリーズの番外編を集めた短編集。男子高校生の主人公が、個性豊かな女の子たちと一緒に町の不思議を解明したりしなかったりする話。

 

感想

「暦物語」の前半部分を収めた英語版(Part 1)を読みました。

シリーズ未読なのに、いきなり番外編的な続編から読んでしまったけれど、楽しく読めました。なんとなく、西尾維新作品は癖が強そう……と未読だったけど、面白かった!

とりあえず、「化物語」は読む本リストに加えました。

好き嫌いが分かれる作風だとは思う。

漫才みたいなやり取りは大好き。だけど一向に話が進まなかったりするので、ずっと読んでると疲れるかも。この本は短編集だったので、そういう意味では適度にインターバルがとれてちょうどよかったです。

 

10年前の本からの警告

出版されたのは2013年で、今より10年以上も前ですが、ドキッとするような言葉もありました。

パンデミックの止め方とか、噂を感染に例えたり。止めるには行きつく先をズラす、とか。

出版当時は違っただろうけど、今はパンデミックと聞くとコロナを連想するので、こういう風に使われるのは、これからの創作物では少なくなっていくのかな。

 

次のセリフは、世界情勢や最近の出来事を考えると、出版当時よりむしろ今のほうが響く警告のように感じます。


p.202  もしも『わけのわからないもの』がはやったときは――時代を疑え。己の足場を疑え。何かがヤバいんだと思えーー危機的状況なんだと思え。
p.202  if 'something inexplicable' becomes trendy――keep an eye on the zeitgeist. Keep an eye on the very ground beneath your feet. Assume that something is fucked――assume that the situation is critical.

 

英語について

驚異の翻訳

言葉遊び、駄洒落、ほぼ全て訳出されているのにびっくり。

ありとあらゆる箇所に、隙あらば出てくるのに、ぶん投げたくならなかったんだろうか。

直訳が不可能な場合でも、何らかの形で可笑しみが付加されている。ほんとすごい。

原文の意味が正確にとれることからしてすごい。あまりに突拍子もないから、文脈から推測することもできないのに。
それに、阿良々木くんはよく微妙~にずれた四字熟語とか諺を使ったりするし。

 

p.151-152  「昔、私は『驚異』を『おどろきい!』と読んでいた」

「それは驚異だな」

p.150 "Back in the day, I thought 'remark' meant 'mark again.'"

 "Truly remarkable."

まさに「おどろきい!」の翻訳でした。

レベルが高すぎて英語の勉強とか言ってる場合ではありませんでした。

そこで、原文も翻訳も両方好きな箇所のうち、短いものを2つ紹介しておきます。

 

p.92  「あ……、こんにちは、飽き飽きさん」

p.91  "Oh, hello, Mister Enoughararaready."

 

p.220  あたしが気付かないものを他の誰かが気付くわけがねえだろ?」

「わけはあるが……なんだその自信」

p.219 It's not like someone else would ever notice something I didn't, right?"

"Wrong, but that's some serious self-confidence you've got there."

ここ、英語版の right?→Wrong の勢いで笑ってしまう。

 

p.60のファーストフード店のアルバイトについて話す場面が一番好きなんだけど、長いので引用は控えます。コントみたいで楽しい。

 

オーディオブック、とてもよかった

和書は2025年3月現在、オーディブルの聴き放題で聞くことができます。

オーディオブック、とてもよかったです。

すごく綺麗で落ち着いた声で、倍速でもとても聞きやすかった。

私は小説に限っては、女性のナレーターだと嬉しい。会話パートで、女性が男性の声色で話すほうが、逆よりも好きなんです。

一人称小説の場合、語り手の性別に合ったナレーターさんになることが多いような気がするけど、この本はそれに反して女性のナレーターさんで、嬉しい驚きでした。

 

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