
アスペルガー症候群をもつ少年の視点から書かれた小説「夜中に犬に起こった奇妙な事件」を、英語(原書:The Curious Incident of the Dog in the Night-Time)と日本語で読みました。
図や絵、字体などが多く、視覚的にも楽しい本でした。英語多読にもおすすめです。
あらすじ
クリストファーは15歳の男の子。アスペルガー症候群があり、養護学校に通っている。2年前にお母さんを亡くしてから、お父さんと二人で暮らしている。ある日、クリストファーは隣家の犬が殺されているのを発見し、犯人を探しはじめる。
感想(※ネタバレあり)
※ネタバレ&否定的な感想を含むので、ご注意ください。
アスペルガー症候群をもつ人の描かれ方が気にかかる
この小説は一人称で書かれていて、クリストファーの視点から語られます。
数学や科学への強い興味やルーティーンに対する執着、知らない人やものへの不安や恐怖など、クリストファーの思考を一緒に辿ることができます。
う~~ん……。実際にアスペルガー症候群をもつ人をよく知る人は、これを読んでどう思うのかが気になりました。
終盤でクリストファーは、誰かを殴るか、持っているナイフで刺してやりたいという暴力の衝動に駆られます(試験中で、特に誰かに何かをされたわけではない場面)。
実際に行動には移しませんが、その理由は、その場にいる人が大柄で、刺したら自分が試験を受けられなくなるから。じゃあ小柄で自分に無関係の人がいたら刺してもいいという考えなのだろうか。そもそも常にナイフを持ち歩いているのが怖い。
また、驚いたのは、クリストファーからは、両親への愛情?愛着?のようなものを感じられないこと。
隣家の犬やペットのネズミに対しては愛着があるように見えたけど、両親に対しては、あまり執着がないように感じました。
すごく評価が高い作品のようですが、こういう疾患への誤解はないのか、当事者やその人を大事に思う人たちが悲しい気持ちにならないのかが気にかかります。
クリストファーの描かれ方は、こういった疾患や困難への理解になるどころか、逆に偏見や差別につながるんじゃないかとすら思ったけど、ネットの読書レビューを見ると、「理解になった」という声が多かったので、私の感性がずれているだけかもしれません。
ラストはいい感じにまとまったように見えて、実際はほとんど何も解決していない気がします。
どんなに追い詰められていたとしても、動物や子供など何の罪もない弱者に暴力をふるうのは許せないし、同情できない。最後の「プレゼント」は不快でした。きちんと罪を償って、精神ケアを受けてほしい。
数学や科学の話題、図や絵が楽しい
数学の話題がちょこちょこ出てきたのは面白かったです。モンティ・ホール問題が登場して嬉しい。あれは本当に面白い。
この本は、図や絵、字体などが多くて視覚的にも楽しいし、そのおかげで、難しい数学や科学の話に脱線しても何となく直感的に?楽しめました。
英語多読にもおすすめ
英語はすごく読みやすかったです。
なんというかクリストファーは「きちんと」書いてくれる感じで、スラングや省略、ほのめかしのような、ふだん解釈に苦労するところがなくてスルスル読めました。
多読にもおすすめです。
But feelings are just having a picture on the screen in your head of what is going to happen tomorrow or next year, or what might have happened instead of what did happen, and if it is a happy picture they smile and if it is a sad picture they cry.(p.148)
でも感情というのは、あしたとか来年とかになにが起こるかということや、起こったことではなく起こったかもしれないことについてスクリーンに映しだされたものだ、そしてもしそれがしあわせな映像ならば、ひとは笑うし、もしそれが悲しい映像ならばひとは泣く。(p.208)

