
1995年にニューベリー賞を受賞した、児童文学の名作「めぐりめぐる月」を英語(原書:Walk Two Moons)と日本語で読みました。
児童書ですが、全体の構成の面でも内容の面でも、子供向けとは感じさせない、読み応えのある本でした。大人が読んでこそ考えさせられるところもあると思います。
あらすじ
13歳のサラは、母が家を出ていってしまい、父と2人で新しい町へと移った。
その後、サラは祖父母と一緒に、遠方にいる母を訪ねる旅に出る。
感想
序盤は時系列がやや分かりにくい
冒頭に、構成的にも内容的にも子供向けとは感じないということを書きましたが、まずは構成のことについて。
物語は、主人公サラが現在から過去を振り返っていますが、過去の回想のなかで更に過去を回想する形になっていて、序盤は少し混乱しました。
完全に把握しないまま読み進めても、だんだん分かっていきましたが、時系列のメモを作ってみたので載せておきます。

ちなみにコレは本文冒頭の3ページで述べられており、ネタバレではありません笑
そうか、今思えば一番最初に説明してくれてたのか。サラの話をちゃんと聞いてなかったのかな私……。
ネタバレを見ないで読んでほしい本
サラは北米横断三千キロの旅をしながら、車中で祖父母に、転校先でできた友達フィービィの話を語って聞かせます。
祖父母との旅の様子と、フィービィをめぐる出来事が交互に語られ、それぞれの話が少しずつ進展していきます。
この、異なる時間軸のものが同時に進行していくのは、ルイス・サッカー著「穴」もそうだったけど、とても楽しい。(ちなみに「穴」もニューベリー賞受賞作(1999年))
サラやフィービィたちの様子が丁寧に描写されているから、途中で少し単調に感じなくもなかったけど、フィービィをとりまく出来事やサラの母が家を出た理由など、「謎」があちこちにあるからスイスイ読み進められました。
最後の展開は予想できませんでした。でも、衝撃だったけど、「そうか、そうか、そうだったんだ」って全てが繋がって納得できる結末でした。
絶対にネタバレとか見ないで読んでほしい本です。
ひっかかっていた謎や伏線が全て回収されていくのもよかったです。
人のモカシンをはく
この本から一番伝わったメッセージは、やはり表題にもなっている、ここの部分かなと思います。
Don’t judge a man until you’ve walked two moons in his moccasins. (p.57)
you shouldn’t judge someone until you’ve walked in their moccasins. Until you’ve been in their shoes. In their place. (p.57)
人をとやかくいえるのは、その人のモカシンをはいてふたつの月がすぎたあと(p.95)
人っていうのは、軽々しく判断しちゃならない。モカシン――靴をはくっていうのは、その人の立場に立つってことで、そうしてはじめてわかるものなんだって (p.95)
はた目には、その人の本当の気持ちや置かれている状況はなかなか分からない。
どんなに近くにいても、その人の身になって考えるのは驚くほど難しい。
まさに今、SNSでの誹謗中傷など、軽々しく人を判断して批判するのが問題視されています。
約30年前に出版された本ですが、今読むのにぴったりのテーマを扱っていると感じました。
アメリカの広大な自然の描写
全体的にハッピーハッピー☆なお話ではないし、特にサラの境遇を思うとたまらない。でも、読後感が不思議と爽やかだったのは、アメリカの豊かで広大な自然の描写が多いからかもしれません。
私はメンタルよわよわなので、母がいなくなって不安定なサラの心情につられて、もっと息詰まるような気持ちになってもおかしくないはずだけど、印象に残ったのは、サラの語りを通して伝わってくる木の匂いや幹の感触など、サラが愛してやまない自然の美しさでした。
I prayed to trees. This was easier than praying directly to God. There was nearly always a tree nearby. (p.7)
祈るあいては木だった。木に祈るほうが、直接神に祈るより、ずっとやさしい。木はいつでも身近にあるから。(p.16)
大人にこそ薦めたい良書
日本語版は、アマゾンなど、ネット書店ではどこも売り切れのようで、絶版なのかな。
この本はどちらかというと大人にすすめたいので、文庫とかで出たらいいのにと思います。
母親にとって子どもは一人や二人より、たくさんいたほうが、忙しすぎて何も考えられないからむしろ楽だ、と言う場面とか、大人にこそ刺さると思います。
Being a mother is like trying to hold a wolf by the ears (p.49)
母親であるってことはらくじゃないわ。オオカミの耳をおさえるようなものでね。(p.84)
最近、児童書の良さに感動してすっかりハマッているので、大人向けに名作児童書の文庫シリーズとか出てほしい……。
英語について
主要人物がインディアンの末裔ということもあってか、独特の言い回し?も多く、読みやすい易しい英語ではなかったように感じます。
また、邦訳は私が入手した英語版とは異なる版から訳されているようで、内容がところどころ違いました。(文章の一部が異なる&邦訳の版のほうが加筆されている)
英語の勉強などで訳を参考にしながら読みたい場合は、入手する英語版に注意が必要かもしれません。
