ペーパーバックの虜

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「本と私と恋人と」エミリー・ヘンリー あらすじと感想

現代のアメリカを舞台にしたラブコメ小説「本と私と恋人と」の原書(英語版)と日本語版を読みました。著者はベストセラー作家のエミリー・ヘンリーで、この本を含め、いくつかの本について映画化の話が進行中です。洒落た会話や言葉遊び、ユーモアが好きな人には特におすすめしたいロマンス小説です。

 

 

あらすじ

ニューヨークで文芸エージェントをしているノーラは、自他ともに認める仕事人間。仕事でもプライベートでも感情より理性を優先するノーラは、仕事はできるが彼氏にはフラれてばかりいる。妹に懇願され、夏休みに姉妹でバケーションに行くことになったノーラは、滞在先で思わぬ人物と遭遇する。その人物とは、ノーラにとって天敵のような凄腕編集者、チャーリー・ラストラであった。

 

感想

クセのある会話が楽しい

まず、この本は、わりと好き嫌いが分かれる本だと思います。

ラブコメのコメディーの部分も強くて、会話で突拍子もないことを言ったりするのが多いので、そういうのが苦手だとちょっと合わないかもしれません。

メインの2人が出版業界人ということもあってか、会話が洒落ていて言葉遊びも多く出てきます。地の文も含めて、他のロマンス小説と比べると、英語も難しかったように感じました。

ネガティブ?なことから言い始めましたが、私にとっては好みド真ん中、超大当たりの本でした。もうエミリー・ヘンリーの他の本を買っています。

ここから先はひたすら賛美しているので、万人に向けておすすめはできない、という前置きをしておきました。

 

好きになれるキャラクター

物語を通して、主役の2人を両方とも好きになれたのがよかったです。

ヒーローとヒロイン、どちらかでも好きになれないと、ロマンス小説は読み進めるのが苦痛になります。

特にチャーリーがね、本当にいいんです。完璧。完璧じゃないのに、完璧。

当て馬役の男性って、ヒーローよりスペックが低い場合が多いと思うんだけど、本作では違います。でも、有名大卒じゃなくても、クォーターバックじゃなくても、ブロンドの長身じゃなくても、チャーリーの方がいい!って本気で思えるんです。ヒロインのノーラにとって、ということではなく。

ヒロインのノーラも好きです。サメみたいに強いと見せかけて、心の中は恐怖でいっぱい。大事な人を守ろうとしてサメみたいになるのも愛おしい。

話が進むについて、ノーラやチャーリーみたいな人に愛されたら幸せだろうな~っていうのが分かります。そんな2人がくっつく物語なんだから、読んでいてハッピーにならないわけがない。

 

お互いが徐々に好きになっていく過程もよかったです。

ロマンス小説は、slow burn(一目惚れとかではない、時間をかけて恋愛関係になる系 ⇔ insta-love)が好みなのですが、最近は、公式の紹介に slow burn って書いてあるのに読んでみたら全っっ然スローじゃない、スローバーン詐欺が多いので警戒しています。

この本は slow burn って宣伝されていたわけじゃないけど、進展が納得できる速度でとてもよかったです。

大人なシーンはあることはありますが(数か所くらい)、メインではないので、そういうのが苦手な人でも楽しめると思います。私は苦手では全くないですが、気分ではなかったので、そこだけ飛ばし読み(会話だけ拾う)しました。本作の2人は、言葉での応酬のほうがキュンキュンする。

 

全体のボリュームは結構あります。

ロマンス作家は短いスパンで次々に発表する多作のイメージがありますが、エミリー・ヘンリーはだいたい1年に1作の頻度で発表しています。うまく言えないけど、たしかに、読んでいて「ぎゅっと詰まっている」感じがしました。

濡れ場も少ないし、さらさらっと読めるロマンスじゃなくて、人生とか、家族とか、居場所とか、心情とかについてもっと深堀している印象で、読み応えがありました。

 

日本版のカバーイラストが可愛い

表紙の絵にある、伯爵とサメが踊ってるの、可愛いすぎませんか?

原書の装丁もおしゃれで素敵なんだけど、この本に限っては、日本版が大優勝すぎる。

「ミッドナイト・ライブラリー」の感想でも語ったけど、読み始める前は何とも思わないのに、読んだ後に見ると「ああ~~!!」ってなる表紙、大好きです。

イラストの MIKEMORI さんは、「伝説とカフェラテ」の表紙も手がけているんですね。積読してます……。

それにしてもこの仲良く踊ってる伯爵とサメ、可愛い。読後に見ると本当にかわいい。顔がにやける。

 

パイロットG2

余談ですが、作中のアイテムとして、日本でもお馴染みの文房具、パイロットのボールペンが出てきます。

高級志向のノーラとチャーリーが、パイロットG2を愛用しているのはなんだか意外でした。全身トータルでおいくら万円の服できめているのに、ポケットから万年筆じゃなくてボールペン出てくるんだ!?ってなりました。

何回か出てくるから、いい宣伝になっていそう。

 

【ネタバレ注意】感想

ここからは結末含めて盛大にネタバレしています。感想というより、ただの心の叫びです。未読のかたはご注意ください。

 

もうとにかく主役カップルに幸せになってもらいたかったので、エンディングに大満足。空っぽの指輪ケースでプロポーズするの最高にチャーリー・ラストラすぎる。午前4時に送っていってもいいって言うところ、「オープンな関係」に嫌だけどノーラが望むなら試してもいいけど嫌だって言うところ、2人の将来を諦めようとするノーラにちょっと考えてから「だめ」って言うところ、踊りたいの?に答えるところ……後半になるにつれて、チャーリーがノーラを大事にするようになるにつれて、チャーリー・ラストラの好きなところがどんどん出てくるの最高にキュンキュンした。お幸せに、ラストラ伯爵とノーラ鮫!