難病を患い、余命宣告を受けた大学教授が、かつての教え子に人生の意味について最後の授業を行う様子を綴ったノンフィクション、「モリー先生との火曜日」。
原書(英語版)と日本語版を読みましたが、人生にまつわる名言、金言だらけの本でした。なかでも、特に心に残ったものを紹介したいと思います。
本書について
私は読む前まで、なぜか小説だと思っていたのですが、本書は実話(ノンフィクション)です。
タイトルの「モリー先生」とは、著者ミッチ・アルボムの大学時代の恩師のことで、社会学を教えていました。
著者は大学卒業後スポーツコラムニストとして活躍していましたが、モリー先生が難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹り余命わずかであることを知り、先生から最後の授業を受けることにします。
授業は毎週火曜日にモリー先生の自宅で行われ、テーマは人生の様々なことについて。老い、死、家族、結婚……などなど。
感想
人生において選択に迷うような難しいこと(結婚、子育てなど)から、考えると怖くなってしまうこと(死など)まで、あらゆる人生の難題について、自分で考えるためのヒントをもらえます。
そのなかで、モリー先生の助言に一貫しているのは「愛」です。
“The most important thing in life is to learn how to give out love, and to let it come in.” (p.52)
「人生でいちばん大事なことは、愛をどうやって表に出すか、どうやって受け入れるか、その方法を学ぶことだよ」(p.69)
「愛」が人生の根底にあるという考えが、この本全体を通して伝わってきます。
モリー先生は教授でしたが、この火曜日の授業は理論的なものではなく、自身の経験に基づいたものです。
母を失って寂しい思いをしたうえ、貧困にも苦しんだ少年時代、精神病院で働いた経験、友人を失った後悔。そうした経験と、自分の体が思うように動かせない闘病生活とともに語られる教訓は、上滑りせず、心に沁み込んできます。
授業の題目は様々ですが、目次に「死について」「家族について」などと章立てしてあるので、気になったところだけ読むのもいいと思います。
よりよい人生を送るための指南がいっぱいの本書ですが、私が付箋を貼った箇所のうち、ほんの一部を紹介します。
The way you get meaning into your life is to devote yourself to loving others, devote yourself to community around you, and devote yourself to creating something that gives you purpose and meaning. (p.43)
人生に意味を与える道は、人を愛すること、自分の周囲の社会のために尽くすこと、自分に目的と意味を与えてくれるものを創りだすこと(p.58)
You have to find what’s good and true and beautiful in your life as it is now. (p.120)
自分の今の人生のよいところ、ほんとうのところ、美しいところを見つけなければいけない。(p.154)
You know what really gives you satisfaction?”
What?
“Offering others what you have to give.”
You sound like a Boy Scout.
“I don’t mean money, Mitch. I mean your time. Your concern. Your storytelling. It’s not so hard. (p.126)
ほんとうに満足を与えてくれるものは何だと思う?」
何ですか?
「自分が人にあげられるものを提供すること」
ボーイスカウトみたいですね。
「別にかねのことを言ってるわけじゃない。時間だよ。あるいは心づかい。話をすること。そんなにむずかしいことじゃないだろう。(p.161)
But giving to other people is what makes me feel alive. (p.128)
だけど、人に与えることで自分が元気になれるんだよ。(p.163)
“Invest in the human family. Invest in people. Build a little community of those you love and who love you.” (p.157)
人類という家族に投資しよう。人に投資しよう。愛する人、愛してくれる人の小さな共同社会をつくろう」(p.199)
“Death ends a life, not a relationship.” (p.174)
「死で人生は終わる、つながりは終わらない」(p.221)
But if Professor Morris Schwartz taught me anything at all, it was this: there is no such thing as “too late” in life. (p.190)
しかし、モリー・シュワルツ教授から教えられたことを一つあげるとすればこれである――人生に「手遅れ」というようなものはない。(pp.241-242)