Matilda に続いて、人気の児童書を読みました。胸が締めつけられるような場面もあったけど、あたたかい気持ちになれる作品でした。英語版も、子どもの一人称で語られるので、とても読みやすかったです。
あらすじ
オーガストは、顔に障害がある男の子。オーガストの顔を見ると人々は驚き、恐怖し、彼から遠ざかる。これまで学校には通わず、家でお母さんと勉強していたオーガストだが、小学5年生から学校に通うことになる。
感想
オーガストだけじゃない。葛藤する子どもたち
"Why do I have to be so ugly, Mommy?" (p.60)
「ママ、ぼくはどうして、こんなにみにくいの?」(p.86)
どこへ行っても人に不躾に見られ、ひそひそ話をされるオーガストの日常は、読んでいて胸が痛くなります。
でも、ままならない現状に葛藤しているのは、オーガストだけではありません。
物語は主人公のオーガストを中心にして進みますが、途中で語り手が交代し、他のキャラクターの心情も徐々に明らかにされていきます。
語り手となるのは全員、思春期の子どもです。障害をかかえたオーガストだけでなく、皆それぞれ必死に生きているのが伝わってきて、全員に感情移入してしまいました。
この語り手になる子たちに共通しているのは、全員、それぞれの事情をかかえてもがきながらも、他人に(オーガストに)「やさしく」あろうとしている点ではないかと思いました。
それは、最後のトゥシュマン校長のスピーチにつながります。
校長は、「必要だと思うより、少しだけ余分に親切に」という引用を紹介し、親切について演説します。
if you act just a little kinder than is necessary, someone else, somewhere, someday, may recognize in you, in every single one of you, the face of God (p.301)
それぞれが一歩踏みこんで、必要だと思う以上に親切にしたら――、いつか、どこかで、だれかが、きみたちのなかに、きみたち一人ひとりのなかに、神様の顔を見るのかもしれません(p.404)
【ネタバレ注意】感想
※ここからはネタバレを含みます。未読のかたはご注意ください。
ミランダ
ミランダの章のラストで泣いてしまった……。
せっかく主役なのに、それも上手くできるのに、誰も見に来てくれない。
財布にオーガストの写真を入れて持ち歩き、ヴィアの笑顔を見て「幸せ」って思うミランダ。バカなことをしてしまったところも含めて、本当に愛おしい。絶対に幸せになってほしいです……!
格言とジュリアン
最後の、生徒たちが書いた格言は、それぞれの個性が表れていてとてもよかった。
なかでも、ジュリアンの格言があったのがびっくり&嬉しかったです。
こんな成績に関わらないもの無視しそうだし、というか、もう転校も決まっていて、やる必要はまったくないのにわざわざ。
「やり直す」と表明していることからも、ジュリアンもオーガストとのことを多少なりとも反省し、やり直したいと考えてるのかも、と思うと嬉しくなりました。
オーガストの存在がジュリアンを変えたんだとしたら、本当にすごい。
表彰式でオーガストだけが表彰された時は、オーガストも素晴らしいけど、周りの生徒たちも表彰に値するんじゃないかとも思ったけど、オーガストの態度や生き方が生徒たちを感化したんですね。
ジュリアンも、新天地でがんばってほしいです。