世界で話題になった卒業式スピーチの書籍化
この本は、作家のジョージ・ソーンダーズが、大学の卒業式で披露したスピーチが話題になって、書籍化されたものです。
YouTubeで見たスピーチにいたく感動して、日本語訳を確認したくて読みました。
シラキュース大学があげているYouTubeの動画は音声が聞きづらいけど、Congratulations, by the way とかで検索すると、同大学のウェブサイトで全文が読めます。
スピーチは10分程なので、この本も絵本のように薄く、すぐ読み終わります。
カバーに「15分で読めるけれど一生あなたの心に残る本」とあって、すごく頷けました。本の煽り文句って異議を唱えたくなるものが多いように感じるけど、これはぴったりだと思います。
人生で一番後悔していることは?
スピーチのなかで著者は、小学生の時にいじめのような扱いを受けていた同級生の女の子がいたのに、行動しなかったことを今でも悔やんでいると話します。
What I regret most in my life are failures of kindness. (p.21)
わたしが人生でもっとも後悔しているのは、「やさしさがたりなかった」ということです。(p.20)
これ、すごくよく分かる。私も勇気がでなくて、何であのとき声をかけなかったんだろうと後悔していることがあります。
逆に、やさしくしようとして、裏目に出たり利用されたりしたこともある。でも、その場合、その時はつらかったけど、それほど後には引きずっていない気がします。
やさしい人になることを目指す
著者は、人生の目標として、成功とかではなく、やさしい人を目指すのはどうか、と提案しています。
これの何が腑に落ちたかというと、「やさしい」って、自分に余裕がないと、なかなか難しいと思うからです。
自分のこれまでを振り返っても、人にとてもやさしくできた時期は、自分に余裕があったし、安定していた。
だから、「やさしい人」の方向を目指して進んでいけば、自然と心身ともに強い人を目指すことにもなり、(ひいては、人にやさしくして酷い目にあったとしても、へこたれずに思いやりを持ち続けられ、)後悔の少ない人生を送れるんじゃないだろうか。
Who, in your life, do you remember most fondly, with the most undeniable feelings of warmth?
Those who were kindest to you, I bet. (p.23)
あなたの人生で、いちばんに温かい気持ちで、もっとも好ましいひととして覚えているのはだれですか?
あなたに対してだれよりもやさしかったひとでしょう、きっと。(p.22)
私も、自分の周囲の大事な人には、「もっとも好ましいひと」として、覚えてもらいたい。
全人類におすすめ
ここ最近の、読んでよかった本ナンバーワンです。
読んで得られたものを考えると、あまりにもコスパがいい……!
日本語の部分だけなら、15分どころか10分で読めると思うし、あらゆる人におすすめの本です。
ただ、リアルの人にはお薦めしにくいので(「もっとやさしくしろよ」ってとられるのでは……考えすぎ?)、ここで存分に喧伝しておきます。
スピーチの原文と対訳が見開きで載っているので、英語の勉強もしやすい。
本を用意するのが面倒でも、YouTubeの動画とかシラキュース大学のウェブサイトで無料で公開されているので、ぜひ読んでみてほしいです。スピーチだし、すごく難解な英語ではないと思うので。